恐らく、発声に悩みを抱くほとんどの方が抱える問題。それがこの「ハイラリンクス」です。ハイ(high)は英語で「高い」、ラリンクス(larynx)は「喉頭」、つまりハイラリンクスは「喉頭の位置が高くなってしまう症状」を指す用語です。

ハイラリンクスは発声時に声を共鳴させる咽頭腔を狭小させます。したがって、ハイラリンクスの状態で発せられる声は響きが乏しい金属的なものとなります。

また、このハイラリンクスの状態が続くと「喉頭の埋まり込み」が起こり、結果、喉頭外筋の力みが慢性的なものとなってしまいます。

「力み」は正しい発声を妨げます。したがって、このハイラリンクス状態での発声は、そのものが誤ったものであるのと同時に、更なる不健全な発声を冗長する非常に厄介な存在であり、必ず克服しなければならない課題といえます。

ハイラリンクスが起こる原因

では、なぜハイラリンクスは起きるのでしょうか?まずはハイラリンクスが生じる原因について説明していきましょう。ハイラリンクスを引き起こす原因となる筋肉は大きく2種類あると言われています。以下がその2つの筋肉です。

顎二腹筋

顎二腹筋

顎二腹筋は、その名前が示すように前腹と後腹、2つの腹を持つ特殊な筋肉です。乳様突起から始まり、舌骨の中間介在腱を経て、下顎骨二腹筋窩へとつながる筋肉です。

下顎骨固定時には舌骨を引き上げ(嚥下時)、舌骨固定時には下顎骨を引き寄せ(開口時)る役目があります。


甲状舌骨筋

甲状舌骨筋

甲状舌骨筋は、名の通り甲状軟骨と舌骨を結ぶ筋肉です。甲状舌骨筋の作用により、舌骨は後下方に移動し、舌骨が固定されている際は、甲状軟骨が引き上げられます。ハイラリンクスは、上記2つの筋肉の強ばりをその原因とする症状なのです。

では、どうすればハイラリンクスを改善できるのでしょうか?それはもちろん、この2つの筋肉の過剰緊張・収縮を改善すること、すなわち、発声時に起こるこれらの筋肉の「力み」を取り除くこととなります。では、各々の筋肉の力みを改善する具体的な方法をご紹介していきましょう。

顎二腹筋の強ばり改善

顎二腹筋の強ばりを改善するためのエクササイズのヒントは、「下顎の動きのメカニズム」にあります。以下、そのメカニズムを紹介しますので、それを理解していただいた上で、顎二腹筋の過剰緊張の解消を実践してみてください。

顎の働き

あなたは顎(アゴ)の開閉はどうやって行われていると思いますか?恐らく、多くの方が、耳の下辺りにヒンジ(回転運動の支点)があり、そこを中心に下顎が開閉する単純構造を思い描くでしょう。しかし、実は顎の開閉は「ヒンジ機能」だけでなく、もう一つ「スライド機能」があるのです。下の図をご覧ください。

下顎の逆の先端部は下顎頭(かがくとう)と呼ばれます。この下顎頭は閉口時、下顎窩(かがくか)と呼ばれる凹部に収納されています。そして開口する際、この下顎頭(かがくか)が下顎窩から抜け出し、下前方向にスライドします。スライド後、開口が自由にできる状態になりようやく、以下のようなヒンジ(回転)運動を起こすのです。

ヒンジ運動

実は、この2つの機能のうち、最初の「スライド運動」に顎二腹筋ストレッチのヒントがあります。顎二腹筋が常に緊張・収縮してしまっている人は、このスライド運動が十分になされません。そこで、外部から開口時にスライド運動がなされる方向、つまり顎二腹筋の緊張と逆の方向に補助を加えるのです。すると、顎二腹筋の緊張に対し拮抗筋同様の作用が働き、結果、顎二腹筋の常習的過剰緊張を少しずつ改善することができるようになるのです。

具体的には、下顎に手を当て、下顎を静かに下げてみましょう。手の重み(+アルファ程度)で下顎の下方向への可動域を大きくするイメージです。くれぐれも痛みが生じないように、優しく実施することが重要です。無理をすると、逆に筋肉が痛んでしまいます。手の力を加えるより、「手の重みで下顎が下がる」程度の作用が良いでしょう

甲状舌骨筋の強ばり改善

甲状舌骨筋に関しては、外部の力でストレッチを施すのが困難です。したがって、発声を通して強ばりの改善を実施することが求められます。この方法に関しては、母音のページにヒントが書かれています。是非、確認してみてください。

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