さて、ミックスボイス習得のための練習1、2、3「力を抜く」「チェストボイスの出し方」「正しい裏声の出し方」は確認していただけたでしょうか?

練習1.がきちんと実施されると、声帯の機能に悪影響を及ぼす声帯自体の力み、ならびに声帯周辺筋肉の力みが解消されます。そして、練習2.により、声帯筋が覚醒、健全な閉鎖期が生成され、正しい地声要素が発声される際の「特有の振動」が感じられるようになります。さらに練習3.において高音域において声帯は伸展・接近されるようになります。

そして、この練習4.により、伸展・接近した声帯が振動部において弛緩し、閉鎖期を有する声帯振動が可能になり、結果、ミドルボイスが発声できるようになります。

声帯筋が機能することで声帯が「緩む」?

声帯弛緩

声帯筋が機能することで、声帯が「弛緩」するとはどういうことでしょうか?これはつまり、輪状甲状筋が声帯全体を前後方向に引き伸ばす中、その一部に弛緩作用を施すことで、その部分のみが振動が可能になるということです。

これが声帯の一部振動のメカニズムです。このメカニズムによって、振動箇所を限定することで、健全なミドルボイスを発することができるようになるのです。

ミドルボイスの練習方法

それでは早速、ミドルボイスの練習方法をご紹介していきましょう。ミドルボイス発声には、声帯筋の機能が必須となりますが、声帯筋を適切に働かせるには、これまでの練習以上に集中すること、および想像することが必要となります。それは練習前の声帯筋は機能不全状態であるが故、働かせようとすると、別の筋肉と混同してしまい、結果「力み」を引き起こしてしまいがちになるからです。

したがって、慎重に、しかしながら躊躇せずに練習を実施することが大事です。まずは、発声時の声帯の正しい働きを想像してみましょう。

ミドルボイス発声時の正しい声帯の働き

声帯機能のピラミッド

  1. 声帯の無駄な力みが解消されている。
  2. 輪状甲状筋により声帯が前後にしっかり伸展している。
  3. 閉鎖筋により2対の声帯同士がしっかりと接近している。
  4. 甲状披裂筋による必要最小限の作用により声帯が閉鎖・弛緩、そして声帯筋により声帯の一部が振動している。

以上が正しくミドルボイス発声された際の声帯の働きです。このうちの4.がこの練習で習得する声帯の機能になります。この中の「必要最小限」が非常に重要です。これを正しく認識できたら、早速練習に取り掛かっていきましょう。

1.ミドルボイス練習の発声音域の確認

まずは、ミドルボイスの練習をする上で、「楽に発声することができる音域」を探っていきましょう。男性の場合「C4、D4」辺り女性の場合「G4、A4」辺りを目安に発声していきましょう。

2.1で決定した音域を「イ」で発声する

発声音域が決まったら、早速練習を開始していきましょう。発声時のスケール(練習音階)は簡単なものでかまいません。ここで使用する母音は「イ」になります。また、発声時は以下4つの項目をきちんと厳守することを心がけましょう。

a.発声時に対の三角形をイメージする

声帯触れ合いイメージ

発声の際には、上下に位置する対の三角形を頭の中にイメージしましょう。この三角形はもちろん、声帯を意味します。そして、声を発する瞬間、この対の三角形の先端のみが接する様子をイメージしましょう。

これまできちんと機能していなかった声帯筋は、まだまだ正常に機能することができず、脆弱な状態です。したがって、少しずつ覚醒させていく必要があり、そのためには「少しずつ機能させていくイメージを持つこと」が重要になります。したがって、声帯筋を対の三角形の先端部とイメージし、その先端部が発声の瞬間に静かに触れ合うイメージを頭に描きながら発声するようにしましょう。

b.声の中に「ジリジリ…」を感じること

発せられる声は、ボリュームは小さいながら、しっかりと芯を有する声である必要があります。このとき、地声の発声メカニズムでご紹介したような「ジジジジ…」という声帯振動時特有の振動を声の中(喉頭音源を発している喉頭の中)に感じられるようにしましょう。

この「ジジジジ…」が感じられない際は、閉鎖期がある正しい声帯運動ができていないことになります。この場合、「力み」に任せて発声してしまっていることになりますので、発声している音域を下げ、無理のない高さで練習をするようにしてみましょう。

c.正しい呼吸の循環を守る

練習その1でご紹介しました「正しい呼吸の循環」「息を吸う→ひんやりを感じる→すぐに声を出す→残った息を吐ききる→自然と入ってくる力に任せて息を吸う」をきちんと厳守するようにしましょう。先ほども申し上げましたが、機能不全状態の声帯筋は、機能させようとするとなかなか思い通りに機能しない分を他の筋肉で補おうという作用が働きやすくなり、結果「力み」が生じやすくなります。したがって、この正しい呼吸の循環の中で、

  • 息を吐ききる瞬間に、上がりかけた喉頭を下げなおす
  • 息を吸う瞬間に、力みをリセットし、なおかつ喉の奥の空間を空ける

以上のことをきちんと意識するようにしましょう。

d.吸気は最小限にとどめる

先ほども記載したとおり、これまで眠っていた声帯筋は弱弱しい状態です。よって、発声音域によっては、少しの呼気量にも耐えられず、ドルボイス発声時の正しい声帯の働き1~4のバランスが崩れてしまいます。したがって、呼気量を最小限にとどめる必要があります。自然な呼吸を実施するには、呼気量と吸気量は等しくなければなりません。ですので、呼気だけでなく、吸気も少量にする必要があります。

呼吸の量を少量にしようとすると、最初は息苦しさを感じるかもしれません。しかし、私たちが日常生活の中で無意識にする呼吸は、至極少量で行われています。つまり、無意識で違和感なく行われる呼吸を、発声練習時にも無理なく行えるようになる必要があるのです。これは単純な慣れ作業です。練習を続けていくうちにできるようになりますので心配せずに練習を実施していきましょう。

2.同じ音域を「ア」「オ」で同様に発声する

以上の練習で「イ」でもってミドルボイスを正しく発することができるようになったら、今度は「ア」「オ」で同様の練習を行います。母音のページにも記載したとおり、発声する母音によって、使用される喉頭筋のバランスは異なります。したがって、全ての母音で正しくミドルボイスを発声できるようにするための訓練をする必要があります。

最初は、「イ」を練習し始めた際と同様の出しにくさ、機能不全感が生じると思います。しかし、上記の内容を正しく守り、発声を繰り返すことで、次第に「イ」同様に発声ができるようになります。

3.中高音域から高音域を「イ」「ア」「オ」で発声する

中音域から中高音息を「イ」「ア」「オ」全原始母音で正しくミドルボイスで発声できるようになったら、今度は発声練習の音域を上げていきましょう。中~中高音域では、最初に「イ」を発声、その後「ア」「オ」という手順を踏みましたが、ここでは3つの母音を一気に練習対象にしてしまってかまいません。くれぐれも声帯のふれあい感や呼吸の循環、呼気量のルールを正しく守り、どんどんミドルボイス音域を広げていきましょう!

いかがでしたでしょうか?以上、正しいミックスボイスを習得するための練習方法を4回に分けてお伝えしてまいりました。どの練習も、1日2日でクリアできるものではありません。しかし、正しい練習方法を継続的に実施していけば、どなたでも必ずミックスボイスを習得することができるようになることができます。人によって練習に割くことができる時間に差はあるかと思いますが、是非、あなたのペースで焦らずしっかりと練習を実施し、ミックスボイス習得を実現していただければと思います!

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