咽頭腔を開く
歌を歌う際に、声の元である喉頭音源を生成するのは、他でもない声帯です。しかし、この喉頭音源はとても小さく、そのまま対外に発せられても「歌」として成立するような音質のものではありません。この喉頭音源に響きを加えるのが、共鳴腔といわれる頭部の空洞です。
ここでは、どのような共鳴腔があるのか、そして、どうすればその共鳴腔を効率的に活用することができるのかについて述べていきましょう。
共鳴腔の中で最も重要なのが咽頭腔
左(上)の図をご覧ください。青い箇所が空洞部分を示しています。共鳴腔は、全部で5つ存在します。上から順に鼻腔・口腔・咽頭腔・梨状陥凹・咽頭室となります。この中で、声質に最も関連するのが3番目の咽頭腔になります。
この咽頭腔での共鳴により、声は響きを得ることができるようになります。咽頭腔は舌骨・喉頭蓋の後ろに存在します。図を見て、全ての共鳴腔の位置関係を正確に把握してみましょう。
また、図の中に甲状・輪状・披裂軟骨と舌骨・喉頭蓋を反映しました。これらが頭部の中のどの辺りに位置しているのかも合わせて確認しておきましょう。
この咽頭腔に声を共鳴させることで、声の響きが豊かになるわけですから、当然求められることは「咽頭腔の空間をより広く確保すること」となります。そのための方法をこれからご紹介していこうと思いますが、その前に一つ。
咽頭腔を開くための練習法として「舌をおもいきり前に出す」というものをよく聞きます。これは正しい手法ではありません。力ずくで舌を前に出したところで、物理的には多少、咽頭腔の体積を大きくさせることができるかもしれませんが、これでは舌や周辺筋肉に力みが生じてしまいます。では、この咽頭腔を開くためにはどうすればよいのでしょうか?まず、咽頭腔を開くために必要なことが2つ存在します。
喉頭蓋を立てる
ひとつめの必要なこと、それは喉頭蓋を立てることです。喉頭蓋が立つことで、声道が開き、喉頭腔が広がります。喉頭蓋は、嚥下時に食物が間違って気管に入ってしまわぬよう、蓋の役目を果たします。しかしながら、発声時はこの喉頭蓋を立て、声道を塞がないようにする必要があります。では、どうすれは喉頭蓋を立てることができるのでしょうか。方法は2つ存在します。
正しい呼吸サイクルの実施
まずひとつめの方法が、正しい呼吸サイクルを実施することです。正しい呼吸サイクルのページで息があたり、ひんやりする感覚を得るように記載しました。このとき、吸気を気管に入れようと喉頭蓋が立ちあがります。正しい呼吸サイクルは、身体の生理的反応を用いた咽頭腔を広げるための練習だったのです。
舌骨の前面移動
ふたつめの方法が、舌骨を前面に移動させることです。喉頭蓋は、それを直接直立させる筋肉が明確にされていません。しかし、舌骨が前面移動することで、舌骨喉頭蓋靭帯でつながれた喉頭蓋が合わせて前に引っ張られ、結果、間接的に喉頭蓋を立たせることができるようになります。
舌骨を前面に移動させるには、オトガイ舌骨筋と顎二腹筋が機能する必要があります。これらが正しく機能するためには、強く緊張するための強化訓練ではなく、過剰緊張をしないこと、通常時に力みが抜けていることが重要になります。
咽頭収縮筋をやわらかい状態にしておく
咽頭腔を開くために必要なことのもう一つは、咽頭収縮筋をやわらかい状態にしておくことです。これは、舌骨の移動をスムーズにするための条件である一方、咽頭収縮筋を柔軟な状態にしておくこと自体が、咽頭腔の共鳴腔としての機能を向上させることとなります。(参照:咽頭収縮筋とストレッチ)
「咽頭収縮筋の硬化」に有効な整体院のご紹介
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