ヘッドボイスは、ミックスボイス習得において必要不可欠な声です。ミドルボイスはこのヘッドボイスに地声の声帯が触れ合いを浸透させていくことで発することができるようになります。すなわち、ヘッドボイスはミドルボイスの足がかりになる声ということもできるでしょう。
同じ裏声に分類されるファルセットとの違いがよくわからないということが言われますが、そこには明確な違いが存在します。ますは、ヘッドボイスの定義について述べ、その後、ヘッドボイスとファルセットの違いについて言及していきましょう。
ヘッドボイスの定義
まずは、ヘッドボイスの定義を確認していきましょう。
- 生理学的:輪状披裂筋により声帯が伸展し、なおかつ声門面積が十分に狭められた状態で発される声
- 音質的:裏声特有の、管楽器のような響き。なおかつ声の中に芯がある声
- 地声/裏声の含有からの定理:裏声(芯のある)のみで構成される。
ヘッドボイスの声区での主役は輪状甲状筋です。
輪状甲状筋が機能することで、声帯は縦方向に長く、横方向には薄く延ばされます。
裏声の発声メカニズムにも記載のとおり、裏声が発せられる際、声帯はその表面部でのみ振動を起こします。
ヘッドボイスとファルセットの違い
まず、ヘッドボイスとファルセットはそれぞれを構成する裏声の種類が異なります。すなわち、ヘッドボイスとファルセットの違いを考えるには、それぞれを構成する裏声の違いを知る必要があります。
ヘッドボイス/ファルセットを構成する裏声の音質の違い
まずは、これらの音質の違いについて述べていきましょう。
- ヘッドボイスを構成する裏声…芯がある。
- ファルセットを構成する裏声…芯がない。
非常にシンプルですが、その差は上記に示したとおり芯の有無にあります。
響きの広がり方(ヘッドボイスよりもファルセットのほうが広範囲に広がる)など他にも違いはありますが、決定的な違いとしてはこの1点が挙げられます。
では、この芯の有無という差はどこからくるのでしょうか?それを生理学の観点から考えて見ましょう
音色の違いは、声門の開閉の違いによるもの。
この芯の有無の違いを生む違いは以下のとおりです。
- ヘッドボイスを構成する裏声…声門が閉じた状態で発せられる
- ファルセットを構成する裏声…声門が開いた状態で発せられる
つまり、発声時に声門が開いているか閉じているかがこの音質的違いの原因なのです。この声門閉鎖を担う筋肉は、ご存知のとおり側筋と横筋です。
すなち、ヘッドボイスを発声するには、輪状甲状筋によって伸展された状態の声帯が、同時に側筋と横筋によって閉鎖される必要があるのです。