裏声を発声できていると思っている人の裏声のほとんどが「力任せ」

「裏声を正しく発声すること」は、ミックスボイスを習得する上で非常に重要なことです。当発声法では裏声のトレーニングを序盤に行います。また、裏声のトレーニングによって鍛えられる輪状甲状筋最も重要な筋肉として位置づけております。(詳しくは内喉頭筋の働きより)つまり、正しく裏声を発生できるようになることは、ミックスボイス習得において最も重要、かつ最初に達成するべき課題です。

ボイストレーニング実施時も、当然最初に裏声を発声していただくのですが、実にその9割の人が「力み」でもって裏声を発しています。どんなに「力を抜いてください」と指摘しても、最初の練習で力みを完全排除できる人はほとんどいません。それぐらい、裏声発声時の「力み」が無意識の中でセットになってしまっていることが多いようです。「力み」でもって裏声発声する人は、本来機能すべき輪状甲状筋の代わりに甲状披裂筋を硬化させ「裏声らしき声」を発声していることが多いようです。

裏声の種類と練習方法

裏声の種類

裏声は「声の種類」ではなく「声の要素」を指す言葉です。裏声で構成される声は3種類存在します。1つ目は、先ほど紹介しました「力み」でもって発せられる「正しくない裏声」、2つ目が輪状甲状筋後筋でもって声帯が伸展・開大した状態で発せられる「ファルセット」、3つ目が伸展した声帯に閉鎖筋が作用し、声門が狭小された状態で発せられる「ヘッドボイス」です。(詳しくは裏声の発声メカニズム。

後者2つの正しい裏声は、ファルセット→ヘッドボイスの順で練習していくのが一般的です。詳しい練習方法や、裏声のチェック方法をミックスボイスを習得するための練習方法その3~正しい裏声の出し方~のページに記載しておりますので、詳しく知りたい方はそちらをご覧ください。

このページでは、上記のページで紹介されている練習方法を実施しながらも、なかなか「力み」から解放されない人のために、裏声の正しい出し方のヒントになりそうなことを2つほどご紹介してみたいと思います。

正しい裏声が最も出しやすい音の高さ

まず「正しい裏声が最も出しやすい音の高さ」について。あなたは現在、どの高さの裏声が最も出しやすいですか?もし、「地声で発声できる音域」と「最も裏声が出しやすい音」の間に大きく差がある場合、それは「力み」に頼った裏声である可能性が高いです。

上述のとおり、裏声発声時に最も優位に機能する筋肉は輪状甲状筋です。この輪状甲状筋によって声帯は伸展されますが、このときの声帯は物理的にゴムと同様に考えられます。

伸展度合いが低い状態、つまり「伸びの余地がある状態」の声帯と伸展度合いが高い状態、つまり「伸びの余地が少ない状態」の声帯とでは、前者のほうが伸展に要する輪状甲状筋の筋力が少量で済むはずなのです。

つまり、輪状甲状筋が十分に発達していない状態で発することができる裏声というのは、本来、ある程度ピッチが低いはずなのです。したがって、最も出しやすい裏声の高さが「地声で発声できる音域」よりもずっと高いピッチであるという方は、裏声を「力み」でもって発している可能性が高いという訳です。

私が見てきた限り、一般的な「力み無し裏声の最も出しやすい音の高さ」は、「一般的ミドルボイス声区の最高音辺りの高さ」のようです。具体的には、男性なら「A4、B4」、女性なら「E5、F5」辺りがその高さに該当します。もし、「力み無し」の裏声がなかなか出せない人は、この音の高さ周辺の音域を重点的に練習すると効果的です(もちろん個人差がありますので、もしどうしても発生しにくい場合はご自身で最も発声しやすい音域を模索するようにしましょう)。

「オ」もしくは「ウ」を使って発声

二つ目に「練習時に使用する母音」について。同じ高さの同じ種類の声を出す場合でも、使用する母音によって作用する喉頭筋は異なります。(詳しくは母音のページ)裏声の練習時は、「オ」もしくは「ウ」を使って発声すると裏声が出しやすくなり効果的です。裏声が苦手な人、裏声の練習を始めたばかりの人は、特に「オ」を使って練習してみるとよいでしょう。

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