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力強いながらも、響きが豊かで美しい地声で高い声を発声することは、老若男女、誰もが共通して憧れることです。

では、それを実現するためには、声帯およびその周辺の筋肉郡はどのように機能するべきなのでしょうか?そして、そのためにはどのような訓練を実施していけばよいのでしょうか?力強い高音域を発声する際の声帯とその周辺筋肉の仕組みについて検証してみましょう。

輪状甲状筋

輪状甲状筋の働き

まず、高音域開拓において、最も重要な筋肉とっても過言でないのが、この輪状甲状筋です。高い音域を発声するのにもっとも重要なこと、それは声帯を伸展させることです。

この声帯伸展において、この輪状甲状筋は最も重要な筋肉です。輪状甲状筋が機能、すなわち緊張・収縮することで、甲状軟骨と輪状軟骨が接近します。その様子を示したものが上(左)の図です。

後輪状披裂筋

後輪状披裂筋

先ほど、輪状甲状筋が機能することで、甲状軟骨と輪状軟骨が接近すると申し上げました。ですが、実は輪状甲状筋だけでは声帯は伸展できません。

声帯が伸展するには、声帯の前方・後方両方に、外側に働く力を作用させる必要があります。そうすることではじめて、声帯は前後に伸展することができるのです。前方で声帯に作用するのが輪状甲状筋、一方、声帯後方で声帯に作用するのが、この後輪状披裂筋となります。

こうして前後に伸展することができるようになった声帯は、しっかりと響きを有する裏声を発声することができるようになります。このように、他の筋肉の機能を補助・調整する筋肉を拮抗筋といいます。したがって、後輪状披裂筋は輪状甲状筋の拮抗筋と言われます。

外側輪状披裂筋、披裂間筋

外側輪状披裂筋(側筋)と披裂間筋(横筋)

輪状甲状筋と後輪状披裂筋が機能するようになることで、声帯は伸展できるようになりました。しかし、後輪状披裂筋が機能することで、声帯は開大、つまり声門が開いてしまいます外転)。

そうすると、発する裏声は「芯がないもの」となります。この状態で発せられる裏声が「ファルセット」となります。

ミックスボイスを習得するためには、その象徴とも言えるミドルボイスが発声可能になることが必要不可欠です。そして、そのミドルボイスを発することができるようになるには、その足がかりとなる「ヘッドボイス」の習得が求められます。

この「ヘッドボイス」は「芯のある裏声」です。裏声に芯を生成するには、この開大した声門を狭小する必要があります。この役目を果たすのが外側輪状披裂筋(側筋)と披裂間筋(横筋)となります。

輪状甲状筋が最優先とされる理由

ここまで紹介してきた筋肉郡は、個々に順当に強化されるものではなく総合的に、さらに言うなら同時進行で強化されることが理想です。しかし、各筋肉を機能させることの得意不得意は人によって異なります。

輪状甲状筋を働かせるのが得意な人
もいれば、外側甲状披裂筋や披裂間筋を働かせるのが得意な人もいます。したがって、輪状甲状筋よりも先に、外側輪状披裂筋や披裂間筋を優位に機能させてしまう人もいます。

しかし、この内転のための筋肉を優先的に機能させてしまう人は、声帯を傷つけてしまう危険性があります。輪状甲状筋が働くことで、その拮抗筋である後輪状披裂筋は働きますが、この後輪状披裂筋は、外側輪状披裂筋、披裂間筋の拮抗筋として、内転が過剰な働きを予防する役目も果たします。

すなわち、輪状甲状筋は声帯を伸展させるだけでなく、間接的にではありますが、外側輪状披裂筋と披裂間筋の過剰作用を抑制するための機能も有することとなります。これが最初に輪状甲状筋の訓練を行う理由になります。

内側甲状披裂筋

内側甲状披裂筋

輪状甲状筋と後輪状披裂筋によって、声帯が十分に伸展するようになりました。また外側輪状披裂筋と披裂間筋によって、2つの声帯は接近した状態になりました。

しかし、ただ伸展しただけの声帯では、発せられる声は裏声要素のみの声となってしまいます。声に地声要素を含むには、声帯は一定量の厚みを残す必要があります。この機能を果たすのが、この内側甲状披裂筋となります。

この内側甲状披裂筋には、声帯の形状維持以外にも、声門接近、ならびに声帯弛緩機能も有します(詳しくは、内側甲状披裂筋の働きより)。

声帯筋

声帯筋

これによって、ようやく地声での高音発声の準備が整いました。伸展→声門狭小→接近した声帯は、地声要素を含む声を発するために、最後、閉鎖される必要があります。この声門閉鎖を担当するのが、この声帯筋になります。

声帯は声唇の先端部です。すなわち、声帯の柔軟性が先端まで達することで、ようやくそれまで「ファルセット」「ヘッドボイス」等の裏声要素のみで構成された声でしか発せなかった音域を地声要素を含む声で歌えるようになります。これが中高音域におけるミドルボイス習得になります。

さらに、声帯筋を強化していくことで、声帯振動を声帯筋のみで起こすことができるようになります。これが最高音を含む高音域のミドルボイス発声となります。

以上が、理想的な高音を発する際の筋肉群(内喉頭筋)の働きになります。このように、理想的な高音を発するためには、喉頭周辺の筋肉を十分に働かせる必要があります。しっかりと練習し、一つ一つの筋肉を鍛えていきましょう。

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