表現力豊かな歌を歌うためには、発する声に強弱を付けることが必要不可欠となります。この文章を読んでいる方の多くは、
- もっと、自分の歌に緩急をつけたい
- もっと、声量をつけたい
と思われていることでしょう。では、声の強さを決める要素とは何なのでしょうか?今回は、歌を歌う際に重要な声の強弱を決定する要素について御伝えさせていただこうともいます。
声門下圧
まずは結論から。声の強さを決める要素、それは「声門下圧」です。声門下圧とは、呼気を吐き出す際に肺の中に生成される過剰な空気圧のことを指します。この声門下圧が声の大きさに直接影響を及ぼすことが証明されています。以下の図を見てください。
これは、被験者に様々な大きさの声を発してもらった際の声門下圧と音のレベルをプロットしたものです。横軸が声門下圧、縦軸が音のレベルになります。
このように、ばらつきはあるものの、この2つの要素には比例の相関関係が見られます。具体的には、声門下圧が2倍になると、声の大きさが9dB(デシベルト)上昇します。
声門下圧は、呼気流量×声門抵抗で表わされます。これは、感覚的に納得していただけるでしょう。声門が一定の割合で開いている場合、その下の空気圧は、呼気流の量が増えるほど、比例して上昇します。一方、一定の呼気流量の元では、声門の開き具合が小さくなる程、その抵抗は大きくなります。
このように、声門下圧は呼気流量と声門抵抗とで決定するのです。こうして私達は、力強い声を出そうとする際、声門が閉鎖された際に発せられる地声を勢いのある呼気でもって出そうとするのです。しかし、柔軟性のない状態の声帯に無理に高圧の呼気を当てると、そこに無理が生じてしまいます。これに関しては正しい地声のピッチ調整メカニズムのページに記載がされています。
声門下圧が高まると、声帯に直接かかる負担が大きくなります。それにより、喉頭筋群の機能バランスは大きく影響を受けます。すなわち、大きな声で歌えるようになるためには、強い声門下圧を受けた状態でも、発声時の内喉頭筋の機能バランスを崩さず維持できるように強化することが求められます。