当発声理論ボイス リビルディングでは、ミックスボイスを「全声域において、正しく発せられる地声と裏声を理想的な割合で並存させる発声技術」として定義しています。そして、上図をそのミックスボイスのイメージとして掲げています。(参照:ミックスボイスとは?)
このミックスボイスには、以下3つの特徴が挙げられます。
- いずれの高さにおいても必ず両方の声が含まれること
- 声の高さが上がるほど、裏声の割合が増え、下がるほど地声の要素が増えること
- いずれの高さも両方の声が十分満たされていること
しかし、練習を初めたての人にいきなりこの状態を目指すようにといっても、取っ掛かりをつかむことができず、結果「理想の声」の習得を実現することはできないでしょう。
したがって、ボイス リビルディングでは、声を3つの声区に分け、それぞれの声区で発せられるべき声を各々で訓練し、最終的に、理想の声の状態に仕上げていくという工程を踏みます。声区の分け方は上(左)図のようになります。
チェストボイス、ミドルボイス、ヘッドボイスの定義とは?
ここでは、これら各々の声区に該当する声、チェストボイス、ミドルボイス、ヘッドボイスの定義を明確化していこうと思います。これらの声区は、それぞれ生理学的、音質的、そして地声/裏声の含有3つの観点から定義付けることができます。
生理学的な定義
チェストボイス | ピッチの上昇に伴い、外側輪状披裂筋・甲状披裂筋の作用が増加する声 |
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ヘッドボイス | 輪状披裂筋により声帯が伸展し、なおかつ声門面積が十分に狭められた状態で発される声 |
ミドルボイス | 輪状披裂筋により声帯が伸展、外側輪状披裂筋・甲状披裂筋の作用により地声要素を含む声を発するための形状が維持、さらに声帯筋が作用し声帯振動に閉鎖期が含まれる声 |
音質的な定義
チェストボイス | 金属音のような音色。声帯のふれあいが感じられる声 |
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ヘッドボイス | 裏声特有の、管楽器のような響き。なおかつ声の中に芯がある声 |
ミドルボイス | 裏声特有の響きがある中に、声帯のふれあいが感じられる声 |
地声/裏声の含有からの定理
チェストボイス | 地声のみで構成される。 |
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ヘッドボイス | 裏声(芯のある)のみで構成される。 |
ミドルボイス | 地声・裏声の両方の声で構成される。 |
よく「ミドルボイスを出せるようになりたい」、もしくはミックスボイスとミドルボイスの意味を混同し、「ミックスボイスを出せるようになりたい」(これらの違いについてはコチラ)という声を聞きますが、ミドルボイスはチェストボイス、ヘッドボイスが出せるようにならないと習得することはできません。
多くの方は、ご自身が「チェストボイスは発声できる」と認識されています。しかし、実際のところはほとんどの方がミドルボイスはもちろん、ヘッドボイスやチェストボイスを正しく発することができていません。
チェストボイス、ミドルボイス、ヘッドボイスの習得工程
次に、これら3つの声の認識をさらに明確にしていただくために、各々の声がどういう工程で習得されるかについて確認してみましょう。
チェストボイス | 「力みによって発せられる地声」→「声帯のふれあいを感じない地声」→「チェストボイス」 |
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ヘッドボイス | 「力みによって発せられる裏声」→「ファルセット(芯のない裏声)」→「ヘッドボイス(芯のある裏声)」 |
ミドルボイス | 「存在しない状態」→(ヘッドボイス上に地声要素が侵入)→「ミドルボイス」 |
各声の習得工程をしめすと上記のようになります。このように各々の声の習得工程が明確になると、ミドルボイス・ヘッドボイスはもちろん、チェストボイスも習得対象の声であることがお分かりいただけるのではないかと思います。ミックスボイスの習得を目指すにあたり、それぞれの声の違いや各声のイメージを明確にするのに参考にしていただければと思います。