甲状軟骨の上部に位置する披裂軟骨は、回転運動をすることで声帯を開閉させる機能があります。この披裂軟骨の回転運動において、声門を閉じる内周りの回転運動を内転、声門を広げる外周りの回転運動を外転といいます。
内転は、有声音を発するのに必要な機能であり、適切な裏声における芯の生成や地声要素を有する声の発声に必要不可欠です。外転は呼吸、そして無声音を発するのに必要な機能です。
豊かな声を発するためには、内転・外転いずれも適切かつ充分に機能させる必要があります。以下、披裂軟骨を内転・外転させる筋肉群とその動きを紹介していきましょう。
外転
後輪状披裂筋(後筋)
外転において、主な働きをする筋肉は後輪状披裂筋(後筋)です。
後筋は、吸気の際に声門を広げる、また、発声時に声帯を伸展させる輪状甲状筋の拮抗筋として機能する筋肉です。(詳しくは、理想的な高音が発される際の筋肉群の働き)
声帯伸展の拮抗筋として機能しながら外転する後輪状披裂筋の働き、さらには外転を受けて披裂軟骨がどのように動くかについては後輪状披裂筋(後筋)の働きのページに詳しく記載しておりますのでご確認ください。
内転
内転をおいて、主な働きをする筋肉は以下の4つです。
外側輪状披裂筋(側筋)と披裂横筋(横筋)
外側輪状披裂筋(側筋)と披裂横筋(横筋)は、チェストボイス・ミドルボイスにおけるピッチおよび声の強さに影響を及ぼします。
側筋は、ミドルボイスにおいては、輪状甲状筋の拮抗筋としての機能を強めるため、ピッチや声の強さへの関与はチェストボイスほど顕著ではありません。
間筋(横筋)は各声区のピッチや声の強さに調整において、補助的に働くといわれています。
外側甲状披裂筋(外筋)
外側甲状披裂筋(外筋)は、肺への異物混入を防ぐために喉頭筋官を閉めるために機能します。
また、チェストボイスにおいて、ピッチ下降に一役買っているという説があります。
内側甲状披裂筋(内筋)
内側甲状披裂筋(内筋)は、チェスト・ミドルボイスにおけるピッチおよび声の強さに影響を及ぼします。※チェストボイスにおいては、内側甲状披裂筋が主に機能しますが、ミドルボイスにおいては、その内側である声帯筋が機能することが重要になります。